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飲食店の人件費は高いのか?

人を減らす前に「店主の時間」を考えたい

飲食店の経営で、

「人件費が高い」

という悩みはよく聞きます。

売上が増える。

忙しくなる。

スタッフが必要になる。

人件費が増える。

利益が減る。

だから、

「どうやって人件費を下げるか?」

を考える。

これは当然のことです。

飲食店では、食材費と人件費が主要なコストであり、FLR(食材費・人件費・家賃)は店舗の収益性を見る重要な指標の一つです。中小機構も、人手不足への対応や業務効率化・省力化を飲食店の重要な経営課題として扱っています。

ただ、私は一つ別の問いを持っておきたいと思っています。

「店主自身の労働時間を、人件費として考えているだろうか?」


店主が働けば「人件費ゼロ」になる?

小さな店では、店主自身が、

  • 調理する
  • 接客する
  • 仕入れる
  • 掃除する
  • シフトを組む
  • 発注する
  • SNSを更新する
  • 採用する
  • 売上を確認する
  • 経理をする
  • 業者とやり取りする

など、ほとんどすべての仕事をやっていることがあります。

スタッフを雇えば給与が発生します。

でも、店主がやれば、

会計上の「給与」は発生しない。

そのため、

「人件費が安い」

ように見えます。

しかし、本当にそうでしょうか。

例えば、

月商100万円の店で、

スタッフの人件費が20万円。

店主が月300時間働いている。

この場合、

「人件費20万円の店」

と考えてしまうと、店主の300時間が見えなくなります。

もし店主の時間に仮に時給1,500円という価値を置けば、

300時間 × 1,500円 = 45万円。

もちろん、これは会計上の費用をそのまま45万円計上するという話ではありません。

経営判断として、自分の時間にも価格をつけてみる

ということです。

すると、

「人件費20万円だから儲かっている」

という見方が、

「店主の時間まで含めたら、この事業は本当に割に合っているのか?」

に変わります。


店主の労働を「無料」にしない

私はここを、小さな店の経営ではかなり重要なポイントだと思っています。

店主は、

「自分がやれば人件費がかからない」

と考えがちです。

もちろん、創業期にはそれが必要なこともあります。

資金が少ない。

売上もまだ少ない。

だから自分でやる。

これは合理的です。

問題は、

その状態が何年も続いていることに気づかないこと。

です。

店主が朝から晩まで働いて、

なんとか利益が残っている。

でも、店主が一日休むと営業できない。

店主が体調を崩すと売上が止まる。

店主が抜けると品質が落ちる。

店主がやらないと経理も採用も発注も進まない。

その場合、

「利益が出ている」

というより、

「店主が大量の労働を投入することで、なんとか事業が成立している」

可能性があります。


これは「人件費が高い」のとは少し違う

例えば、

月商300万円。

スタッフ人件費90万円。

家賃40万円。

原価90万円。

その他30万円。

単純化すると、50万円が残ります。

一見すると悪くないように見えます。

でも、

店主自身が毎月300時間働いているとしたらどうでしょう。

50万円を得るために、店主が300時間働いている。

しかも、

  • 仕入れ
  • 掃除
  • 調理
  • 接客
  • 管理
  • 営業
  • 経理

までやっている。

この50万円は、

「事業から生まれた利益」なのか、
「店主の労働に対する報酬も含まれたお金」なのか。

一度分けて考えたほうがいい。

もちろん、実際の会計上の利益と店主の報酬の扱いは法人・個人事業などによって異なります。

ここで言いたいのは会計処理ではなく、

経営者として、自分の労働価値を見えなくしない

ということです。


「人を減らす」より「仕事を減らす」

ここから、もう一段重要な話があります。

人件費を下げようとすると、

「スタッフを減らそう」

となりがちです。

でも、本当に減らすべきなのは、

人ではなく、必要のない仕事

かもしれません。

例えば、

注文を手書きしている。

↓

モバイルオーダーを導入する。


毎日同じ発注を人が確認している。

↓

発注の仕組みを整える。


電話予約に時間を取られている。

↓

予約システムを使う。


毎回同じ説明をしている。

↓

マニュアル化する。


店主しかできない仕事が多い。

↓

手順を標準化する。

こうすると、

「人を減らす」

のではなく、

「一人あたりの仕事量を減らす」

ことができます。

中小機構の「省力化ナビ」でも、飲食業についてモバイルオーダー、予約管理、セルフレジ、調理・配膳ロボットなど、業務を省力化・生産性向上につなげる事例が整理されています。


ただし「効率化すればいい」でもない

ここも注意したいところです。

効率化という言葉を聞くと、

「人が少なくても大量に売れる店にしよう」

となりがちです。

でも、それだけでは前の記事と同じ問題になります。

売上が増える。

効率化する。

また売上を増やす。

また忙しくなる。

そして店主がさらに働く。

これでは意味がありません。

大切なのは、

効率化によって生まれた時間を何に使うのか。

です。

例えば、

  • お客さんを見る
  • 商品を改善する
  • 集客を考える
  • スタッフを育てる
  • 新しい商品を作る
  • 地域との関係を作る
  • 経営数字を見る
  • 次の事業を考える

こうした仕事に時間を移す。

そうすれば、

「作業を減らす」ことが「経営者の仕事を増やす」ことにつながる

可能性があります。


店主にしかできない仕事と、店主でなくてもできる仕事

私は、店主の仕事を二つに分けて考えると分かりやすいと思います。

店主がやるべき仕事

  • 店の方向性を決める
  • 商品を考える
  • お客さんを見る
  • 店の強みをつくる
  • 重要な顧客との関係をつくる
  • 採用・育成の方針を決める
  • 数字を見る
  • 新しい売上の柱を考える

店主でなくてもできる仕事

  • 清掃
  • 発注
  • データ入力
  • 定型的な事務
  • 一定の調理工程
  • 定型的な接客
  • SNSの定型投稿
  • 予約管理
  • レジ対応

もちろん店の規模や業態によって違います。

大切なのは、

「自分がやっている仕事を、全部自分がやらなければならない仕事だと思わない」

ことです。


店主の時間には「機会費用」がある

もう一つ、経営者として意識したいのが、

機会費用

です。

例えば、店主が毎日2時間、

「本当は他の人に任せられる事務作業」

をやっていたとします。

月25日営業なら、

2時間 × 25日 = 50時間。

この50時間を使って、

  • 新しい商品を作る
  • 店舗集客を改善する
  • 既存客の分析をする
  • 新しい販売チャネルを探す
  • 他店を研究する
  • スタッフを育成する

こともできたかもしれません。

つまり、

店主が作業をしている時間には、その作業をしていることによって失っている別の価値もある。

これが機会費用です。


私が「止まれない」と感じた理由もここにある

以前、デリバリー・オフィス向けの販売をしていたとき、

売上約140万円。

原価約70万円。

家賃約30万円。

人件費約20万円。

というケースがありました。

この数字だけでもコスト構造を考える必要があります。

でも、もっと苦しかったのは、

売上を作るために、自分自身も動き続けなければならなかったこと

でした。

売上が増える。

仕事が増える。

仕事が増えるから人手が必要になる。

人を増やせばコストが増える。

それでも売上を止められない。

そうすると、

「もっと売上を増やそう」

という行動が、

自分をさらに忙しくすることがあります。

これは、前の記事で話した「良い売上・悪い売上」ともつながっています。

売上が増えるほど、店主の自由が減っていくなら、その売上の構造を見直す必要がある。

ということです。


人件費を「削るコスト」だけで見ない

人件費という言葉には、

「できるだけ下げるもの」

という印象があります。

でも、本来は少し違います。

人は、

売上を作るためのコストであると同時に、価値を作るための資源

でもあります。

料理を作る。

接客する。

お客さんと関係を作る。

新しい商品を考える。

店を改善する。

これらはすべて人がやる仕事です。

だから、

「人件費が高い」

と感じたら、

いきなり人を減らす前に、

「その人件費によって、何の価値を作っているのか?」

を見る。

逆に、

「人件費を払いたくないから店主が全部やる」

となったら、

「その仕事を店主がやることで、本当に事業価値が高まっているのか?」

を見る。

この二つを分けることが重要です。


良い人件費と悪い人件費

ここまで考えると、人件費も「高い・安い」だけでは見られなくなります。

例えば、

良い人件費になりやすいもの

  • 売上を生み出す
  • お客

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